鈴木と恋愛関係になるマユと美弥子。ふたりは何かと対照的だ。堤は静岡編の画面をアンバー系の色味にして、東京編をブルー系に統一した際、「マユアンバー」「美弥子ブルー」と名付けていたくらいだ。都会的で洗練された美弥子に対して、マユは地方都市で生活する女性なので、80年代ファッションを10着ほど着替えるのだが、先端過ぎるものは着ていないという設定にして、あえて80年代の象徴的な肩パッドの入った服は着ていない。そういう細やかなところも見どころのひとつ。
前田は東京編の前にひとりクランクアップしていたが、何度か東京編の撮影に見学に来た。だが、鈴木と美弥子の重要なシーン(横浜のジャズバーで撮影)の時は、堤から見学禁止を言い渡されたと言う。鈴木が美弥子に気持ちが動いていく繊細なシーンに、マユが現れると気持ちが揺れてしまうからという配慮らしい。
前田は、美弥子の演劇部の後輩との飲み会(本所吾妻橋の居酒屋)のシーンと、クランクアップの劇団北斗七星の演劇公演のシーン(流山の江戸川大学)に見学に。羽をつけた劇団員が前田のお気に入りだとか。